王子ホールディングス(株)は、地球環境に配慮した生分解性プラスチックの開発およびさらなる機能を加えた紙製品の開発を加速する。
王子グループは、環境負荷削減の取り組みとして、植林と紙のリサイクルを積極的に進めており、国内外に管理・保有する合計45万ヘクタールの森林資源は、年間で約1390万トンの温室効果ガスを吸収している。これは、王子グループ温室効果ガス年間排出量(*1)の約2倍にあたる。
(*1) 輸送を除く国内外連結子会社の SCOPE1(直接排出:事業者等の燃料の燃焼などによって発生する温室 効果ガス)、SCOPE2(間接排出:外部購入する電気、蒸気などの使用に伴う温室効果ガス)の合計値
最近、欧州連合(EU)が海洋生物保護のため、使い捨てプラスチック製品の使用を禁止する法 案を提出し、米国大手外食チェーンが相次ぎプラスチック製容器やストローを見直す計画を出すなど、世界でプラスチックに替わる製品の需要が高まっている。
王子グループは、これまで、飲料やヨーグルト・アイスクリームなどの容器、ファストフード店で利用される耐油機能を備えた容器・包装紙など、食品用途向けの各種原紙を製造してきたが、 この度、イノベーション推進本部パッケージング推進センター(2018年4月1日設置)を中心に、プラスチックに替わる、生分解性プラスチックの開発と、さらなる機能を備えた紙製品の開発を進めていく。
1. 生分解性プラスチックの開発
①「生分解性プラスチックとパルプ複合素材」の開発・サンプル提供
王子エフテックス(株)は、パルプを生分解性プラスチックであるポリ乳酸(*2)と複 合化した樹脂ペレットの開発を進めている。パルプを複合化することにより成形品の剛性が向上、耐熱性(熱変形温度)も改善され、射出成型時間の短縮、成形品の用途の拡大が期待される。現在、顧客へのサンプル提供を開始している。
樹脂ペレット成形例 (写真左、左:ポリ乳酸単独、右:パルプ複合化ポリ乳酸) (写真右、上:ポリ乳酸単独、下:パルプ複合化ポリ乳酸)
(*2)ポリ乳酸は、植物由来で、かつコンポスト(堆肥)化による再資源化が可能な合成樹脂
②生分解性プラスチック原材料の自社開発
従来、生分解性プラスチック原料に使用される糖液(グルコース)は、主にサトウキビやト ウモロコシなどの可食原料から製造されているが、王子グループではバイオエタノール 製造で培った要素技術(酵素回収、連続製造)を応用し、非可食原料の木材(セルロース) から糖液(グルコース)を効率的に製造する技術を開発した。
今後、糖液(グルコース)の量産体制を整備するとともに、将来的には生分解性プラスチックの自社開発、もしくは、提携による開発を目指す。
2. さらなる機能を備えた紙製品の開発
①バリア性を有する包装材料の開発
現在、主にプラスチックが使用されているバリア性を有する包装材料を紙に置き換えるために、 再生循環型の包装材料を開発した。当開発 品は水蒸気および酸素の両方に対してバリア性を有するマルチバリア紙であり、紙単体で水蒸気 に対しては一般のバリアフィルム並み、酸素に対しては、蒸着フィルム並みの高いバリア性能が得られる。
②紙コップ蓋(トラベラーリッド)の製品開発と紙製ストロー原紙のサンプル提供を開始
プラスチック蓋が主流となっていることから、生分解性を有している再生可能な「パルプ」を原料とした紙製の蓋を開発した。同開発品は、耐水性、耐熱性を持っており、ホット用・アイス用の紙コップの蓋として使用可能。
また、王子エフテックス(株)では、紙製ストロー原紙として使用可能なサンプル提供を開始。耐水性を有し、スパイラル加工による紙ストローの製造に適した原紙である。