ヘンケルは 3月14日までフランス・パリで開催中のJEC World 2019において、軽量化とコストパフォーマンスを兼ね備え、自動車産業における高性能な複合ソリューションの継続的なニーズに応える「LOCTITE MAX(ロックタイト マックス)」シリーズのポリウレタンおよびエポキシマトリックス樹脂の最新開発技術に焦点を当てた発表を行っている。「LOCTITE MAX 5」、新製品の「LOCTITE MAX 5 Next Gen」および「MAX 6」樹脂は、特にホイール製作において、顕著に優れた耐熱性、機械特性および視覚的特性を持ち合わせた部品製作ができるうえ、軽量化、生産性の向上、およびカスタマイズに大きく貢献することができる。
ごく最近の例として、LOCTITE MAX 5はティッセンクルップの新世代超軽量編組カーボン製二輪用ホイールの開発を手助けした。このマトリックス樹脂は硬化が速く、短時間で型へ充填できる。こうして作られた複合材ホイールは、従来の鍛造アルミニウムのものに比べ、最大1.8kgの回転質量を節約することができる。これにより、バイクのハンドル操作がしやすくなり、燃費が改善するというメリットがもたらされる。このホイールは、二輪車メーカー側から指定された非常に厳しい公差要求を満たすために、ヘンケルと密に協力し製造工程を最適化し、開発された。様々な異なるモデルでも使用するため、連邦ドイツ自動車交通当局による公道での使用認可をすでに取得している。
「板ばね用のLOCTITE MAX 2樹脂とホイール用のMAX 5樹脂の成功に続き、この技術の高性能複合材ホイールやハイブリッド材ホイール市場における様々な課題に注力し取り組んできました」とヘンケルの、シャーシおよび電子システム担当上級事業開発部長のコンラッド・ブリモ・ハヤック氏は述べている。「というのも、自動車OEMやティア1部品サプライヤーの自動車や二輪車の軽量化を手助けしていく中で、量産性とカスタマイズされた外観という要求を満たしながら、より優れた耐熱性と靭性をも提供する複合材ホイールに対するニーズが高まっていることをヘンケルでは感じ取っているからです」。
JEC World 2019ではヘンケルの革新的なLOCTITE MAXシリーズのマトリックス樹脂に新たにラインアップした、明確な付加価値のある特性を持つ2つのグレードを展示している。
LOCTITE MAX 5 NextGen は、実績のあるMAX 5をベースとした2液エポキシベースの配合で、高温にも対応の200℃のガラス転移点(Tg、DSC示差走査熱量計で測定)、そしてK1C 1.1以上という靭性値を有しており、優れた機械特性を備えている。さらに、この次世代素材はカーボンの贅沢な質感が非常にはっきりと出せることが特徴。
LOCTITE MAX 5 NextGenは、大量生産用の高圧レジントランスファー成形機(HP-RTM)など一般的な液体成形技術を使用して加工することができる。
耐熱性と靭性において、さらに高い性能要求を満たすように設計されたLOCTITE MAX 6は、超高温下での使用で動作する部品向けに、270℃以上のTgと1.0以上のK1Cを有している。
どちらの樹脂も主にOEMおよびティア1の複合材ホイール市場や補修部品としてのホイール市場の消費者をターゲットとしており、世界中で試験的に運用が可能。LOCTITE MAX 5のマトリックス樹脂を使用して生産されるホイールシリーズはJECで展示されている。既存のLOCTITE MAXシリーズの主な利点は、迅速な金型への充填、繊維への完全な含浸性、硬化の速さ。そしてLOCTITE MAXシリーズのマトリックス樹脂で成形された複合材ホイールは同等のアルミニウムデザインのものと比較すると、自動車用ホイールの重量を1個当たり最大30~50%削減できる。
すでに実車に装備され注目されている用途として、LOCTITE MAX 2で製作された軽量板ばねがあり、これはさまざまなボルボのモデルのリアサスペンションに実装されている。
LOCTITE MAXシリーズのマトリックス樹脂技術は、他のポリウレタンやエポキシ樹脂と比較し、部品メーカーの工程に柔軟性を持たせることができ、時間とエネルギーを節約することが可能。3A複合材エアレックス®フォームコアを使用したサンドイッチ部品を、HP-RTMを使い、ガラスとカーボン繊維強化のLOCTITE MAX 2で成形試作したところ、非常に低圧で高い射出速度を達成し、サイクルタイム短縮という優れた結果をした。
「この試作での課題の1つは、フォームの安定性を維持するために十分に低い圧力と硬化温度のバランスをとることでした」とブリモ・ハヤック氏は説明する。「弊社のLOCTITE MAX 2のマトリックス樹脂は、“サイクルタイムをさらに短縮する可能性大”という最高のソリューションが提供できると証明しました」。
ヘンケルの先進的なマトリックス樹脂は、同社の戦略的アプローチの一部であり、量産構造部品用の材料、プロセス、および技術設計の専門知識を製造工程全般に渡って積上げ、強化している。これらの知見はプリフォーム用バインダーや専用の離型剤のみならず、異種材および異種コンポジット用の特別な接着剤にも活用できる。ドイツのハイデルベルクと日本の横浜にある設備の整ったコンポジットラボは、顧客の新しいデザインの製品化までの時間を検証し、迅速化するためのサポートを行う。ヘンケルは世界各地に拠点があり、認定機械メーカー、金型メーカー、および技術設計の提携企業との緊密なネットワークにより、いっそうの補完体制をとっている。