ユニチカ(株)は、超フレキシブル化が可能な有機ELディスプレイ(OLED)用ポリイミド(PI)ワニスを新たに開発した。これにより、従来のPIワニスの課題となっている「生産性向上」の解決が期待できるため、今後パネルメーカー向けにPIワニスの供給展開を加速する。
1.開発の背景
高い耐熱性と優れた寸法安定性を有するPI薄膜は、OLED用のフレキシブル基板として用いられる方法が実用化段階に達している。この方法は、PIワニスをガラス基板上に塗工、乾燥、熱硬化させることにより、ガラス基板上にPI薄膜が積層一体化された状態となり、このPI薄膜の表面にLED素子を形成後、最後にPI薄膜をガラス基板から剥離することにより、フレキシブル基板とするもの(図-1)。
従来のPIワニスでは、熱硬化時に気泡の発生や塗膜のハガレを避けるために、熱硬化をゆっくりと時間(3~5時間)をかけて行う必要があるため生産性が低いという問題がある。このような問題を解決するためには、PIワニスに大量の添加剤を配合することにより、PI薄膜をガラス基板に強固に密着させるという方法等が知られているが、熱硬化時のハガレや気泡発生が抑制できる反面、素子形成後の剥離が困難になったり、膜強度等の力学的特性が悪化したりするという問題がある。また、PI薄膜を薄膜化するほど、フレキシブル基板の最終工程での剥離が困難になるという問題もある。
2.特長
同社が新たに開発したPIワニスは、PIの精密設計技術とワニス化のための配合技術により、ガラス基板と「強固に密着し」かつ「剥離されやすい」という、相反する特性が必要という課題を解決した。同社の開発したPIワニスでは、熱硬化を速くしても基材からのハガレや気泡発生が起こりにくく、短時間(従来の1/3~1/4)で高品位のPI薄膜を形成することができ、生産性が飛躍的に向上する。また、超フレキシブル化が可能な20μmという厚み(図-2)にしても、PI薄膜の良好な剥離性を確保することができる。なお、従来のOLED用ポリイミド基板の厚みは、100μm程度。
3.今後の展開について
現在、開発したPIワニスに関する関連特許は約10件出願済み。すでに海外顧客向けに採用が決定し、間もなく実生産用ワニスの出荷が始まる。今回の採用を契機に、パネルメーカー向けに、ワニス供給による展開をさらに進める。