三井化学(株)は、2018年『三井化学触媒科学賞』および『三井化学触媒科学奨励賞』受賞者を決定した。
三井化学グループは、化学および化学産業の持続的発展に寄与する目的で、世界の触媒科学分野において特に優れた業績をあげた研究者を表彰する制度を2004年に制定し、2005年3月に第1回の表彰を行っている。第7回となる今回も多数の応募があり、下記の通り受賞者を決定した。授賞式と各受賞者による記念講演は、2018年10月23日にタワーホール船堀(東京都江戸川区)で開催される「第8回CSJ化学フェスタ」において実施される。
<2018年『三井化学触媒科学賞』受賞者(1名)>
氏 名:M. Christina White
所属・肩書等:イリノイ大学教授
タイトル:Site-Selective Aliphatic and Allylic C-H Oxidations for Late-Stage Functionalization
選考理由:Christina White博士は、アリル位および脂肪族の触媒的C-H酸化反応の開発において、先駆的な業績を挙げている。従来、このタイプの反応には配向基を有する反応基質を用いる必要があったが、White博士は新規の遷移金属触媒を開発し、配向基を用いない選択的な酸化反応を実現した。White博士の手法は、複雑な構造を有する化合物の、いわゆるlate-stage functionalizationにも適用することができ、薬科学の分野にも貢献し得ることが高く評価され、本受賞に至った。
<2018年「三井化学触媒科学奨励賞」受賞者(2名)>
氏名:生長幸之助
所属・肩書等:東京大学講師
タイトル:Chemoselective Transformations by Radical-Conjugated Redox Catalysis:From Functional Small Molecules to Biomacromolecules
選考理由:生長幸之助博士は、有機ラジカルと一電子レドックス触媒を組み合わせたradical-conjugated redox catalysisを活用し、選択的な有機変換反応を実現した。同博士の手法は、小分子から高分子まで 適用でき、特に、タンパク質など複雑な構造を有する生体マクロ分子の選択的な変換を実現した点が高く評価された。
氏名:Robert R. Knowles
所属・肩書等:プリンストン大学教授
タイトル:Proton Coupled Electron Transfer in Organic Synthesis
選考理由:Robert R. Knowles博士は、酸化(レドックス)光触媒系を用いたプロトン共役電子移動(PCET)により、有機合成に有用なラジカル生成反応を先駆的に開発し、波及効果の大きい新たな領域を確立 した。特に、イリジウム錯体光触媒系により炭素-水素結合の官能基化や閉環反応を可能とする酸化的あるいは還元的PCET系を多数開発し、ファインケミカルや天然物などを合成する方法を開発した。