パナソニック(株)は「高濃度セルロースファイバー成形材料」(※1)を活用した、環境配慮型のリユースカップを開発した。屋外におけるイベントや店頭での持ち帰り用のビール類の提供を想定し、2019年8月9日からテスト展開を始める。
このリユースカップは、高い形状自由度とリユース可能な強度を実現するとともに、画像や文字を自由にデザインすることができるため、各種イベントにおいてノベルティ・記念品としての活用も期待される。また、カップ表面にセルロース繊維由来の細かな凹凸を施すことで、ビール類の持続性のあるきめ細かな泡をつくりだす特長がある。
パナソニックは2015年からセルロースファイバー樹脂の開発を始め、2018年8月に発売したコードレススティック掃除機MC-SBU820J/MC-SBU620Jの筐体に同材料を採用した。
その後、さらなるプラスチック量の削減に向け、天然由来成分の高濃度化、および用途拡大についての開発を進め、この度セルロースファイバーを55%以上含有する白色の高濃度セルロースファイバー成形材料の開発に成功した(※2)。
この高濃度セルロースファイバー成形材料は、パナソニックが開発した金型・成形技術により、木質感を表現し、高いデザイン性を提供することが可能であり、自然由来の木の風合いを楽しむことができる。高濃度セルロースファイバー成形材料は、パルプ(間伐材などから精製)を主原料としているため、廃棄する際にも紙製品(可燃物(※3))として分類することができ、プラスチックごみの低減にも貢献する環境にやさしい素材。
ここ数年、環境負荷低減に関する意識の高まりから、テーマパークやコンサート、スポーツ観戦の会場においてリユース可能な容器の普及が進んでいる。イベントを記念したデザインやアーティスト、選手の画像をデザインし、付加価値を高めることで記念品として持ち帰り需要が生まれている。
今回、アサヒビール(株)とコラボレーションし、オリジナルリユースカップ「森のタンブラー」として、複数のイベントにてテスト展開を実施する。
2019年8月9日、8月16日、9月某日(金曜日、日程未定)には、小湊鉄道(株)あ運行するSATOYAMAトロッコ「涼風ビール列車」(オープンビアガーデン)にて、「森のタンブラー」で『アサヒスーパードライ』の生ビールを提供する。提供した「森のタンブラー」は記念に持ち帰りが可能。
2019年8月18日には、パナソニックスタジアム吹田で行われるガンバ大阪対ジュビロ磐田戦の開催前イベントにおいて、「森のタンブラー」を500個用意し、『アサヒスーパードライ』の生ビールとともに販売する。
2019年10月4日~6日には、つくばセンター広場(茨城県つくば市)にて開催される「つくばクラフトビアフェスト2019」において、「森のタンブラー」が5,000個採用される。
これらの取り組みを通じて、会場内でのリユースや記念に持ち帰ることができるカップとして使用され、プラスチックごみの削減効果を検証する予定。
パナソニックは、2017年に「パナソニック環境ビジョン2050」を策定した。2050年に向けて、使うエネルギーの削減と、それを超えるエネルギーの創出・活用を目指す。
今回、リユースカップのテスト展開によって、環境に優しい容器の普及活動を進めることで、「事業を通じた持続可能な社会への貢献」を目指していく。
■京都大学 生存圏研究所 矢野浩之教授のコメント
豊富に存在する木材などの植物資源から作るセルロースは持続型の脱炭素社会を支える大型産業資材として世界中で研究が進められています。今回、泡の良さのような新たな特徴を活かし、セルロースファイバー成形材料が世界で初めてビール用カップに使われることは、人と環境に優しい植物材料には多くの可能性があることを示しています。今後、様々なバイオマス材料や食品加工後の植物性残渣の活用が進むことを期待します。
※1 開発にあたっては環境省の委託業務(平成27年度~平成29年度セルロースナノファイバー製品製造工程におけるCO2排出削減に関する技術開発)で得られた成果を活用している。(一社)日本有機資源協会(JORA)が発行するバイオマスマークを取得予定。
※2 パナソニック株式会社ニュースリリース
2019年7月8日 高いデザイン性を実現する高濃度セルロースファイバー成形材料を開発
※3 自治体の分別排出ルールに従ってください。