富士フイルム(株)は、大容量データのバックアップやアーカイブに最適な磁気テープストレージメディアの規格「LTO Ultrium(*1)」の第8世代に対応した「FUJIFILM LTO Ultrium8データカートリッジ」(以下、LTO8)を発売した。LTO8は、磁気特性・長期保存性に優れる微粒子「バリウムフェライト(以下、BaFe)磁性体」を採用し、従来品(*2)の2倍となる最大記録容量30TB(非圧縮時12TB)を実現する。また、最大750MB/秒(非圧縮時360MB/秒)の高速データ転送も可能で、高い利便性を発揮する。本製品は、大容量データを低コストで安全に長期保管することができ、ますます増大するデータストレージ需要に対応する。
昨今、高精細な4K・8K映像の登場やIoT・ICTの進展、AIを用いたビッグデータ解析の普及などにより、世の中のデータ量は爆発的に増加している。なかでも、生成されてから時間が経ちアクセス頻度が低くなった「コールドデータ」は、全データの8割以上を占めると言われている。近年では、「コールドデータ」をはじめ、蓄積されたデータを活用する動きが急速に進んでおり、これらのデータを安全・安価に長期保管したいというニーズがますます高まっている。磁気テープは、大容量、低コスト、長期保存性といった特長を有するだけでなく、ネットワークから隔離したエアギャップの状態でデータ保管が可能であるため、サイバーアタックなどによるデータ破損・消失のリスクが低く、大手データセンターや研究機関などで長年にわたり利用されている。今後は、AI・IoTを駆使して高品質・高効率生産を実現するスマートマニュファクチャリングや、インターネットへの接続機能を持つコネクティッドカーなど、大規模なデータを生み出す最先端領域での活用も期待されている。
富士フイルムは、磁気特性・長期保存性に優れる微粒子「BaFe磁性体」を開発し、2011年に世界で初めて「BaFe磁性体」を用いた磁気テープを実用化した。2012年には、「LTO Ultrium」規格として初めて「BaFe磁性体」を採用したLTO6を発売。当時主流だった「メタル磁性体」の大容量化の限界を見据え、世界に先駆けて「BaFe磁性体」を用いた磁気テープを実用化したことで、市場を常にリードしてきた。
今回発売するLTO8にも「BaFe磁性体」を採用し、同社独自の「NANOCUBIC技術」(*3)を進化させ、従来のLTO7に対してさらに微粒子化した「BaFe磁性体」を均一に分散し、テープ表面のうねりや厚みムラのない平滑な薄層磁性層を塗布している。LTO7の2倍となる最大記録容量30TB(非圧縮時12TB)を実現するとともに、最大750MB/秒(非圧縮時360MB/秒)の高速データ転送も可能で、高い利便性を発揮する。このほか、材料設計を最適化することで、磁気ヘッドの高精度なトラッキングと優れた走行耐久性を実現。安定的なデータの読み書きが可能となり、高い信頼性を備えている。
富士フイルムは、2000年にLTO1を発売して以降、高性能・高品質な大容量磁気テープの開発に取り組んできた。また、磁気テープのみならず、アクセス頻度に応じて磁気テープ・HDDにデータを保管できるデータアーカイブストレージシステムも提供している。今後は、LTO8をデータアーカイブストレージシステムと組み合わせて活用し、省エネルギーで大容量データを保管したいというニーズに応える。
同社は、世界シェアNo.1(*4)のコンピューター用磁気テープメーカーとして、ユーザーニーズと信頼に応える高性能・高品質のメディアやサービスを開発・提供し、世の中の社会課題の解決に取り組んでいく。
*1 Linear Tape-Open、LTO、LTOロゴ、UltriumおよびUltriumロゴは、Hewlett Packard Enterprise社、IBM社およびQuantum社の米国およびその他の国における登録商標。
*2 「LTO Ultrium」規格の第7世代に対応した「FUJIFILM LTO Ultrium7 データカートリッジ」
*3 高密度の磁気記録を実現する富士フイルム独自のナノ薄層塗布型磁気テープ技術。磁性体の微粒子化を実現する「ナノ・パーティクル技術」、微粒子化した磁性体を均一に分散・配列させる「ナノ・ディスパージョン技術」、超薄層塗布を実現する「ナノ・コーティング技術」から構成されます。
*4 生産者シェア。同社調べ。
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【磁気テープストレージメディア】富士フイルム、従来比2倍の最大記録容量30TBを実現
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