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【複合高機能樹脂】花王、CNFの疎水化技術を活かした「LUNAFLEX(ルナフレックス)」の供給を開始

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 花王(株)は、バイオマス由来のセルロースナノファイバー(Cellulose Nanofiber. 以下、CNF)を改質し、各種用途の樹脂に配合することで、少量でも樹脂の強度や、寸法安定性(熱膨張率の低減)を向上させることを可能にした。この改質CNF配合高機能樹脂を、ユーザーの目的や用途にあわせてカスタマイズした『LUNAFLEX(ルナフレックス)』シリーズとして、提供を開始する。
 同社は、改質CNF配合による物性の向上が、樹脂使用量の削減と小型化・軽量化、すなわち資源の効率的利用に大きく寄与できるものと考え、社会のサステナビリティに貢献していく。 
背景
 CNFは、樹木等の植物中でセルロース分子の束を形成しており、高強度・高弾性などさまざまな機能を有するサステナブルな高機能素材として世界中でその有効活用が望まれている。また、CNFを樹脂に配合すると、樹脂の強度や靱性、寸法安定性の向上効果があることがすでに知られている。

 しかしCNFは分子間および分子内で強固に水素結合をしているため、ナノファイバーとして単離する(繊維の束を1本1本ほぐした状態にする)ことは非常に難しい課題であった。さらには、単離した後もその表面は水酸基で覆われていて強い親水性を示すため、油性溶媒にはなじみが悪く、分散安定化は非常に困難であった。
また、従来はCNFメーカーが調製したCNF製剤(疎水改質CNFやCNF分散溶媒)を、ユーザーである樹脂メーカーに提供していた。しかし、樹脂への配合の際にCNFが凝集してしまうなどの不具合が生じてしまうことが多く、樹脂中への均一ナノ分散には種々のノウハウが必要ということもわかってきた。
『LUNAFLEX(ルナフレックス)』シリーズの提供開始
 花王は、セルロース研究の第一人者である、東京大学磯貝明教授ら*1 によるCNF単離の成功をきっかけに、これまで自社で独自に積み上げた界面制御技術に基づき、CNFの表面にさまざまな官能基を付加することで発現する機能を探索してきた。その結果、親水性のCNF表面を疎水表面へと改質することが可能となり、CNFを樹脂へ均一ナノ分散することに成功した。この界面制御に寄与しているテクノロジーが、量子化学計算による構造予測に基づいた、“デュアルグラフトシステム”と呼ばれるCNF表面設計技術である(図1)。これは、濡れ性と立体反発の観点で選定した2種類の修飾基をCNFの表面に結合させる方法で、少ない修飾基重量で疎水表面へと改質し、CNF本来の物性の発現を可能とする。さらに、用いる樹脂に合わせて、濡れ性と立体反発の観点から適切な修飾基をカスタマイズすることで、樹脂となじみやすくする。

*1 T. Saito, A. Isogai et. al., Biomacromolecules. 2006, 7, 1687-1691.

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図1  デュアルグラフトシステム(モデル図)

 こうして、さまざまな樹脂に対してCNFを均一ナノ分散することによって、CNFの性能を最大限に引き出すことができる高機能複合樹脂を得ることができ、樹脂メーカーに提供することが可能になった。さらに、単に樹脂メーカーへの複合化原料の提供にとどまらず、樹脂メーカーが抱いている課題を解決する、課題解決型の、改質CNF配合樹脂を『LUNAFLEX』シリーズと称して提供する取り組みを始めた(図2)。

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図2 課題解決型の改質CNF配合樹脂 『LUNAFLEX』シリーズ


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