セイコーエプソン(株)は、グループ会社であるEpson Italia S.p.A.(社長:Massimo Pizzocri、以下EIS)を通じ、デジタル捺染印刷機の開発を目的に新たな研究開設施設として、Innovation Research Lab(イノベーション・リサーチラボ)とPrinting Research Center(プリンティング・リサーチセンター)を世界有数の捺染業拠点であるイタリアのコモ地域に開設した。
イノベーション・リサーチラボはエプソンの子会社であるFor.Tex S.r.l.(社長:Pietro Roncoroni、以下フォルテックス社)と共に設立、捺染印刷用のインク技術の研究開発を専門とした施設。プリンティング・リサーチセンターは同じくエプソンの子会社であり捺染業界のリーディングカンパニーであるFratelli Robustelli S.r.l.(社長:村田すなお、以下ロブステリ社)と設立した拠点。この施設は捺染印刷向けのインクジェット技術の研究開発を担う。
この2つの施設に加え、エプソンはフォルテックス社およびロブステリ社と共にTextile Solution Center(テキスタイル・ソリューションセンター)を2014年4月に設立しており、エプソンのコモ地域における研究開発拠点は合計3カ所となった。今回の施設開設によって、エプソン、フォルテックス社、ロブステリ社はコモ地域からデジタル捺染印刷を世界中に展開する体制を一層強化する。
セイコーエプソン業務執行役員 プロフェッショナルプリンティング事業部長、ロブステリ社社長である村田すなおは、次のように述べている。「私たちはイノベーション・リサーチラボとプリンティング・リサーチセンターの開設を発表できることをうれしく思います。これらの最先端の研究開発施設はコモ、そして世界中でインクジェットによるデジタル捺染印刷の発展を加速させたいというエプソンの姿勢を示すものです」
エプソンは、長期ビジョンEpson 25においてデジタル捺染を含むプリンティングの事業領域を、独自のインクジェット技術である「マイクロピエゾ技術」を核に、強みを発揮して成長が見込める重要な領域と位置付けています。今後もその取り組みを強化し、アナログ印刷からデジタル印刷へのテクノロジーシフトを起こすことで、高品質な多品種・少量生産や環境負荷低減などの価値をお客様に提供していく。
イノベーション・リサーチラボについて
イノベーション・リサーチラボはフォルテックス社の本社に位置し、デジタル捺染の新インク開発サポートのために設立された。インクに求められる特性の最適化、新機能、安全・環境性向上などの新たなお客様価値を調査し、それを具現化していくことが最終的な目的。この目的を達成するためにイノベーション・リサーチラボは最先端の設備を有し、化学系の技術を持ったメンバーが所属している。
プリンティング・リサーチセンターについて
プリンティング・リサーチセンターはロブステリ社の本社に位置し、エプソンがさらに品質の高い捺染印刷機をお客様にお届けできるように捺染印刷向けのインクジェット技術の研究開発を行う。
テキスタイル・ソリューションセンターについて
エプソンとフォルテックス社は2014年4月にデジタル捺染印刷のデモや教育を目的としたテキスタイル・ソリューションセンターを開設した。このセンターでは、前加工処理から印刷工程、後工程処理まで、デジタル捺染印刷の工程を一通り見学できる貴重な施設であり、捺染ビジネス従事者や、デザイナー、ファッション専門の学校や団体のデジタル捺染への取り組みを支援している。
デジタル捺染印刷および市場について
デジタル捺染印刷の特長として、精細なグラデーションや微妙な色調の再現が可能なこと、伝統的なアナログ印刷では不可欠な版が不要であり、低コストで多品種少量・短納期の生産が可能なこと、さらに染色材料のロスがほとんどないため環境負荷も低減できることなどが挙げられる。絵や図柄などを捺染や他のメディアに印刷をするデジタル技術は急速に発展しており、アナログからデジタルへのテクノロジーシフトが加速しつつある。このため2014年におけるワールドワイドの生地の捺染による印刷面積は310億m2で、そのうち2~3%にデジタル印刷が用いられていた※1が、2019年までに約17%まで伸びると予想されている※2。
※1 Provost Ink Jet Consulting Ltd調べ(2016年)
※2 WtiN Intelligence調べ(2015年)