BASFのグループ会社であるBASF 3D Printing Solutions社(B3DPS)は11月13日~16日にドイツ・フランクフルトで開催された展示会「formnext 2018」にて、UV硬化樹脂およびレーザー焼結印刷法の新製品を展示した。またこれに伴い、3Dプリントの画期的なソリューションおよび製品の開発と提供に向けた、数々の新たなパートナーシップを発表した。
B3DPSは、米国カリフォルニア州サンフランシスコのOrigin社と戦略的提携を結び、UV硬化樹脂印刷プロセスのさらなる開発を進めている。「オープン・ビジネス・モデルの枠組みで、BASFの材料に関するノウハウとOriginの印刷ソフトウェア・プログラミングおよび対応するハードウェアの製造に関する専門知識を組み合わせています」と、B3DPSのマネージング・ディレクター、フォルカー・八ンメス氏は述べている。この提携はすでに成功の兆しを見せており、Originは、BASFの新しいUV硬化樹脂「Ultracur3D」が特に良好に処理できる新しい印刷法を開発した。この技術により、良質な表面仕上げと高い機械的安定性という最適な組み合わせが提供されると同時に、材料の高スループットも可能になる。
B3DPSはまた、3Dプリンターおよび対応するソフトウェア、材料のメーカーであるPhotocentric社と共同で、機能部品の大量生産用の新しいUV硬化樹脂および大判UV硬化樹脂プリンターの開発に取り組んでいる。Photocentricは、英国のピーターバラと米国のフェニックスに拠点を構え、自社の印刷システム用の画像生成器としてLCDスクリーンの使用を開発し、最適化した。両社は、小型部品の射出成形といった従来の製造プロセスの一部の代替となり、かつ大型部品の製造も可能にする、業界向け3Dプリントソリューションを提供する予定。
また、紹興市に本社を置き、Sprintrayの名称で米国で事業展開している中国のプリンターメーカー、Xunshi Technology社とも提携しており、これはB3DPSがもつUltracur3D製品の新たな応用分野を開拓することを目的としている。
UV硬化樹脂印刷プロセスに向けたUltracur3Dの特殊性
B3DPSは、3Dプリントプロセス用に設計された、既に定評のあるUV硬化樹脂と新しいUV硬化樹脂を、Ultracur3Dというブランド名でグループ化した。BASFは、特殊な部品特性を可能にする新製品向けに独自の原料を開発した。
「Ultracur3Dポートフォリオにより、私たちは既存の材料よりもはるかに優れた機械的特性と長期安定性を備えた、様々な3Dプリント向けUV硬化型材料を提供することができます。これらの材料は高い圧力を受ける機能部品向けに開発されました」と、B3DPSのシニア・ビジネスディベロップメント・マネージャーであるアンドラス・マートン氏は述べている。
フィラメントの販売ネットワークの拡大
B3DPSの子会社であるInnofile3D社は、中国の天津に拠点を置くJet-MateTechnology社と提携し、中国におけるプラスチックフィラメントの販売を開始する。同時に、米国ノースブルックのM.Ho|land社と、米国におけるフィラメントの販売に関する協定を締結した。
B3DPSのビジネスディレクターで、3Dプリンティングによる付加押出成形を担当するイェルーン・ウィガース氏は次のように述べている。
「フィラメントの最大市場である米国での活動を強化していきます。また、私たちにとってもう1つの重要な市場はアジアです。そこでのさらなる販売チャネルを開発し、2019年にUltrafuseフィラメントをアジア市場に投入するつもりです」
BASFの3Dプリント用フィラメントのポートフォリオは、一般的な用途のための従来のポリマーをベースとした、既にて定評のあるInnofili3Dフィラメントと、技術的要求が高い用途で使用される先進的な処方を用いたポリマーベースのU|trafuseフィラメントの2つのカテゴリーから成る。このポートフォリオは市場で最も幅広いフィラメントの選択肢の1つで、プロトタイプから工業規模の生産に至るまで、顧客の要件に対応している。
SLS:防火認証を持つ新しい3Dプリント材料
新しい難燃性UltrasintポリアミドPA6 Black FRは防火規格UL94V2を満たし、高い剛性と熱安定性を認められる粉末焼結積層造形法(SLS:Selective Laser Sintering)で使用するための新しい材料。B3DPSは公共輸送車両の世界的なリーダーと協力し、車両の火災防護要件を満たす新しい部品を開発した。「現在、パートナーと共同で、試作品、予備部品、小型部品を生産しています。また、その他の認証仕様に対応するために、難燃性のさらなる向上に取り組んでいます」とハンメス氏は述べている。
また、BASFはこの春、AMUGでUltrasint Grey PA6LM XO85を発表した。Ultrasint PA6 Black LM XO85はポリアミド6をべ一スにしており、175~185℃で使用できるため、既存の大半のSLSマシンに適している。
B3DPSの3Dプリントポートフォリオに加わったポリプロピレン
2018年7月のAdvanc3D Materials社の買収により、B3DPSはポリアミドAdsint PA12、Adsint PA11、Adsint PAMCF、Adsint TPU flex90など、レーザー焼結機に使用する材料でその対応範囲を拡大した。 Ultrasint PPは中でも中核となる製品。ポリプロピレンをべ一スにしたこの製品は、優れた機械的特性を示し、また、価格と性能のバランスが良いことから、標準的な工業生産で頻繁に使用されている。Ultrasint PPは、その優れた可塑性、低い水分吸収、および液体や気体に対する抵抗性において際立っている。試作品や小ロットが従来の連続生産と同じ材料で生産できるようになった。熱成形、シーリング、染色などの後処理は、印刷後に行うことができる。