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【ホットメルト粘着剤】日本ゼオンの非対称SISの研究成果、「2020年度日本接着学会技術賞」受賞

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 日本ゼオン(株)が開発を進める非対称SIS(スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体)の研究成果が、「2020年度日本接着学会技術賞」を受賞した。独自に開発した技術により、ラベル用ホットメルト粘着剤の機能向上を実現し、その工業的価値の向上に貢献したことが評価された。
受 賞  名 :2020年度 日本接着学会技術賞
研究題目:新規なブロック構造により高速ダイカット性を実現したSIS系ホットメルト粘着剤
 非対称SISとは、スチレンとイソプレンの熱可塑性ブロック共重合体であるSISの両末端スチレンブロックに意図的に非対称な構造を持たせ、そこに対称な低スチレン比率の対称スチレンブロックを混在させることにより、高スチレン含有量ながらスフィア構造*1 という特異な相構造を持たせた、同社が独自に開発したポリマー。近年、主に紙おむつ用の伸縮材料(エラスティックフィルム)の素材として需要が拡大しているが、「スチレン含有量が高く且つ柔らかい」というユニークな性能に着目し、これまでSISが使われてきた諸用途における技術課題解決の可能性を追求してきた。
 今回、受賞対象となった研究は、非対称SISの粘着ラベルへの応用に関するもの。
 有機溶剤を用いない粘着ラベルには「ホットメルト型」と「アクリルエマルジョン型」の2タイプがあり、日本では「アクリルエマルジョン型」が主流であるものの、世界市場では、塗工ラインスピードの速さ、被着体選択制の広さ、低温タック*2の出しやすさに優れる「ホットメルト型」も大きく成長している。ホットメルトのベースポリマーには主にSISが使われるが、従来のSISは粘着物性に優れる一方、粘着ラベル用途においては高速での打ち抜き加工性(ダイカット性)*3および配合される軟化剤の染み出しが長年の課題となっていた。同社は非対称SISの技術を深化させ、こうした課題の解決に取り組んだ。その結果、良好な粘着物性を保持しつつ、高速ダイカット性および軟化剤の耐染み出し性(オイル保持性)をも両立させることに成功した。
 また、ダイカット工程の粘着剤研究においては、これまでは実際の工程試験にて確認することが一般的であったが、代用評価方法を確立したことが早期開発に寄与し、今後のラベル用粘着剤の更なる付加価値向上も期待されている。
<用語説明>
*1 スフィア構造
 ブロック共重合体はその凝集状態で形成するミクロ相分離構造の1つ。SISの場合はスチレン部分の形状により次のように分類する。球状:スフィア、棒状:シリンダー、板状:ラメラ。従来型のSISでは、高スチレン含有量タイプはシリンダー構造またはラメラ構造となる。
*2 低温タック
 タックとは、接着表面のベタツキのこと。一般に低温ではタックは低下するが、低温保管の食品用途では必須条件となる。従来の技術では、低温タックとダイカット性はトレードオフの関係にあった。
*3 打ち抜き加工性(ダイカット性)
 紙や板を型(ダイ)を用いてさまざまな形に打ち抜くこと。従来型のSISの場合、粘着ラベルを加工する工程において、打ち抜かれた粘着剤部分がダイの刃やラベル表面に付着したり、ラベルがカスと一緒に巻き上げられたりして、加工性を妨げる。


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